続ブログションガネー

心にうつりゆくよしなしごと

大人になってから楽しむ「マルサの女」

前回に引き続き、国立映画アーカイブの特集「1980年代日本映画――試行と新生」で観た作品のことを書きます。

今回は「マルサの女」(1987/伊丹プロ=ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)。
この作品は、たぶん中学生の頃にテレビで観てから約30年ぶりの鑑賞だったと思います。当時は、マルサとか税金のことは全く分かっていなかったので、伊丹映画あるあるのオーバーな表現が面白かったという記憶しかない。あと、宮本信子扮するヒロインの亮子が寝癖のまま出勤するので、上司に「亮子ちゃん、寝癖」と言われるのを友人と真似したりしていました。

…さて、大人になって見てみると…。
子どもの頃と違う観点で面白かった!のでした。
面白かった点①脱税を発見するプロセスが理解できた
経理を経験して会社のお金の流れが分かり、確定申告をやって収入を得てから納税や還付を受けるまでもやったこと、あー、こうやって調べていくのね、と実に興味深かったです。謎解きの楽しみといいますか。しかし査察先でザクザク出てくる印鑑の山は今も笑ってしまう。
ちなみに撮影までには国税もかなり協力していて、映画の封切時期も確定申告の開始に合わせて2月だったらしいです。
面白かった点②亮子と権藤の関係性が深くわかるようになった
物語は、山崎努演ずる巨額の脱税をしているホテルの経営者・権藤を亮子はじめマルサの面々が追っていく筋が中心となります。物語が進むにつれ、亮子と権藤には友情のようなものが芽生えてきます。この描写が物語に膨らみを与えていると思いました。おそらく、友情には権藤の息子の太郎と亮子が信頼しあえるようになるという点も影響していると思います。
面白かった点③家庭や職場でコンピュータや携帯を本格的に使い始める時代の社会描写
権藤のホテルはコンピュータで客室管理をしているのが自慢です。亮子は脱税先のデータをおそらく部署に一台しかないコンピュータで調べます。太郎君はファミコンスーパーマリオを一緒にプレイすることで亮子と仲良くなります。
そしてマルサが権田の周囲を本格的に査察するときの決めの場面にマルサのメンバーが使うのがあの肩掛け式携帯電話!
あのころは「すごいなー」と思っていたものを、今では普通に使っているのが感慨深い。上記の場面は、コンピュータや携帯がオフィスや家庭に徐々に普及し始めた時代の記録にもなっています。

そして一番面白かったのは、映画を最初に観たときは私は権藤の息子の太郎君と同世代で、彼と同じくスーパーマリオのキノコの無限増殖に人生かけていたのに、今の私は亮子と同世代(あるいはやや年上)になっていたことです。たかが30年、されど30年。

あと、亮子の寝癖を指摘する上司はマルサの津川雅彦だとずっと思っていたのですが、税務署時代の上司の大滝秀治でした。30年来の誤解が氷結。

※Noteに2021年3月25日に掲載した文章に加筆修正しました。

 

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