続ブログションガネー

心にうつりゆくよしなしごと

大人になってから楽しむ「帝都物語」

「大人になってから楽しむ」シリーズ第二弾、今回は「帝都物語」(1988/エクゼ)です。この作品も国立映画アーカイブ「1980年代日本映画――試行と新生」で観ました。
帝都物語」は映画の封切前に原作にめちゃめちゃはまって、友人とも回し読みをしていました。あと、この本をきっかけに東京という街の成り立ちに興味を持ち始めたと思います。
映画の公開日には原作を回し読みした友人たちと日比谷のスカラ座に観に行き、来場されていた荒俣宏先生や実相寺昭雄監督にサインを頂いた思い出があります。
観終えた後、嶋田久作平幹二郎の対決する件の「加藤が来たぞー!」「式神を打てー!」とか、坂東玉三郎原田美枝子に「ご新造さん、あんた観音力をお持ちだね」と呼び掛ける場面をみんなで真似していました。「ご新造さん」と言い合う中学生って(^^;)。

今回はその時以来の鑑賞となります。子どもの頃に大いに感銘を受けた作品が、大人になってもう一度見たら実はトホホな作品だった…ということが以前あったのですが、そんなことはなく今回も大いに楽しみました。
まず出演俳優の豪華ラインアップ。いまだに渋沢栄一勝新太郎と連想してしまうカツシンさんの重量感。文人らしい高橋幸治幸田露伴。凛々しいたたずまいが美しい原田美枝子の辰宮恵子。ダンディー宍戸錠早川徳次。親しみやすいキャラの寺泉憲演ずる寺田寅彦。実の父上を演ずる西村晃が、学天則の最後を見届けるところは西村さんの優しさが出ていて好きな場面です。玉三郎さんの泉鏡花は鏡花本人に驚くほどそっくり。
そして加藤保憲嶋田久作!あの何とも言えない不気味さは大人になって観ても怖い。

それから市電が走る銀座の街をセットで作ったり、加藤の操る式神のデザインがギーガーだったり、今観るとお金のあった時代の映画だなあ、と。
そういえばこの作品は大河ドラマの「いだてん」とも時代がかぶっていて、浅草六区に孝蔵や清さんがいたり、日本橋を金栗先生が走っていたらどうしよう、と妄想を抱いてしまいました。

帝都物語」が封切られた頃は、東京の街が大きな変貌を迎えつつある時代でしたが、今また東京の街が再開発で新しく変わっていきます。しかし、虎ノ門や麻布台あたりの地形を変えるほどの再開発を見ていると、映画の冒頭の平幹二郎演じる平井保昌が土地の風土に合わせた開発を提唱する場面を思い出してしまうのです。

※Noteに2021年3月30日に掲載した文章に加筆修正しました。

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